Kちゃんの思い出(2)~出会い編:前

私はその時,スリーピーウッドにいました.

なぜそこにいたのか,いつからそこにいたのか,その後何をするつもりだったのか,ほとんど何も覚えていません.

ただそこにいて,行き交う人をぼんやりと眺めていました.芥川龍之介の小説「羅生門」で,若者が洛陽の門の袂に腰を下ろしてぼんやりと行き交う人を眺めていたように,私もただぼんやりとそこを通る人を眺めていたのでした.

ふと,画面の白文字の会話に目をやると,

「この帰還の書を使えばヘネシスに帰れます」
「ありがとう」

というやり取りがありました.

ただその二行だけで,だいたい何があったのかは理解できます.私も以前そうであったように,低レベル者がスリーピーに迷い込んで帰れなくなったのでしょう.

会話の主を求めて移動すると,二人組の低レベル者と話をしている女の子が画面に入ってきました.二人組は女の子と男の子です.装備を見ただけで「そりゃ,ここから出るのは無理だろう」と分かるくらいのレベルです.話しかけている女の子は重装備の鎧を身に纏った戦士でした.

二人組は,その女の子に何度もお礼を言って,帰還の書で姿を消しました.女の子はそれをしっかり見届けてから,どこへなりと消えて行きました.

画面の隅から三人を見送った私は,何だか心にポッと暖かい灯火が点った様な温かな気持ちになりました.その女の子の親切が,とても素晴らしい事に思えたからです.ヘネシスの帰還の書を一枚ずつ上げた,たったそれだけの小さな事ですが,迷ってしまった二人組みには何にも代え難い助けであったはずです.

「街で見かけたチョット良い話」を読んだ時のように,嬉しく楽しくワクワクした気分になっていた私は,ももにもその女の子の話をしました.こういう些細な気遣いをさり気無くこなせることがとても大切だということ.常にそういう気持ちで周囲を見ていないと,肝心なときに何もできずじまいになってしまうこと.小さな親切が誰にでもできる簡単なことに見えるのは,していることが「小さい」から.簡単そうに見えて難しいのは,今それを必要としている人がいると気が付くことが難しいから.常に周囲に優しい目を向けているような,そんな女の子だったのかもしれない・・・などなど,とりとめもなく話をしました.

「で,その人,なんて名前なの?」

そうももに聞かれるまで,その子の名前なんて気にもしませんでした.

「う~ん,名前は見なかったなぁ.今度見かけたら名前見ておくよ.」

と言ったものの,名前も知らない相手をどこでどうやって見かけられるものか.しかし,何の根拠もありませんが,漠然とまたどこかで会えるような,そんな気もしていたのでした.

(つづく)


Kちゃんの思い出シリーズ記事リスト

  1. Kちゃんの思い出(1)~スリピ警備隊編 2010年2月3日
  2. Kちゃんの思い出(2)~出会い編:前 2010年2月4日
  3. Kちゃんの思い出(3)~出会い編:後 2010年2月7日  
  4. Kちゃんの思い出(4)~再会編:前 2010年9月5日 
  5. Kちゃんの思い出(5)~再会編:後 2010年9月6日 
  6. Kちゃんの思い出(6)~お別れ編:前 2010年9月6日 
  7. Kちゃんの思い出(7)~お別れ編:後 2010年9月8日 
  8. Kちゃんの思い出(8)~奇跡の再会.そして,あしたへ 2010年9月10日
  9. Kちゃんと奇跡の再会2010年9月23日
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